売却損が出たときの損益通算と繰越控除
マイホームを売ったものの、買ったときより安くしか売れず売却損が出てしまった、という方から「せめて税金の負担を軽くできないか」というご相談を受けることがあります。不動産の売却損は原則として他の所得と相殺できませんが、マイホームに限っては例外的な特例が用意されています。
この記事では、居住用財産の売却損を他の所得と相殺できる損益通算の制度、控除しきれない分を繰り越せる繰越控除、二つの特例の違い、そして札幌の物件を例にした試算までを説明します。
売却損(譲渡損失)とは何か
不動産を売却したときの譲渡所得は、譲渡価額-(取得費+譲渡費用)で計算します。この結果がマイナスになった状態が売却損(譲渡損失)です。
- 通常、不動産の売却損は給与所得など他の所得と相殺できないのが原則です
- マイホーム(居住用財産)の売却損については、例外的に損益通算・繰越控除の特例が用意されています
- 特例は大きく分けて「買換えの場合」と「買換えをしない場合(オーバーローン)」の2種類があります
どちらの特例も、税金の負担を軽くできる可能性がある一方、細かな要件が定められています。
居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
マイホームを売って、新たに別のマイホームに買い換えた場合に使える特例です。
- 所有期間:売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていること
- 買換え先の要件:床面積50㎡以上の家屋に買い換えること
- 所得要件:繰越控除を適用する年の合計所得金額が3,000万円以下であること
要件を満たせば、売却損をその年の給与所得や事業所得などと損益通算でき、控除しきれない分は翌年以降最長3年間繰り越して控除できます。
特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
買い換えをしなくても使える特例で、売却時に住宅ローンの残債がある場合が対象です。
- 所有期間:こちらも売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていることが必要です
- オーバーローン要件:売却代金より住宅ローン残高のほうが多いこと
- 損益通算できる金額:「住宅ローン残高-売却価格」を上限とします
この特例でも繰越控除は最長3年間です。買換えの特例と異なり、新たにマイホームを購入しなくても利用できる点が特徴です。
札幌の物件を例にした試算
具体的な数字で見てみます。
- 札幌市内のマンションを2,400万円で売却
- 取得費3,000万円、譲渡費用100万円、所有期間8年(5年超)
- 住宅ローン残高2,600万円が残っている
譲渡所得=2,400万円-(3,000万円+100万円)=マイナス700万円で売却損が発生します。一方、オーバーローン額=住宅ローン残高2,600万円-売却価格2,400万円=200万円です。損益通算できる金額は、売却損700万円とオーバーローン額200万円のうち小さいほうである200万円が上限になります。この200万円をその年の給与所得等と相殺し、控除しきれなければ翌年以降最長3年間繰り越せます。
適用を受けるための注意点
いずれの特例も、要件を満たしているだけでは自動的に適用されません。
- 確定申告が必須です。給与所得者で通常は確定申告不要の人でも、この特例を使うには申告が必要です
- 繰越控除を受ける年も、毎年連続して確定申告を行う必要があります
- 合計所得金額が3,000万円を超える年は、繰越控除が使えない年になります
札幌市内や道内で住み替えを検討する際、地下鉄沿線・JR沿線の市街地エリアのように価格が下がりにくいエリアもあれば、郊外で購入時より値下がりしやすいエリアもあります。売却損が見込まれる場合は、早い段階でこうした特例の対象になるかどうかを確認しておくと安心です。売却全体の流れは売却の流れと費用・税金、関連コラムは売却コラムもあわせてご覧ください。なお、税金や登記の取り扱いは個々の状況によって判断が分かれることがあります。最終的な判断は税務署または税理士にご確認ください。当社は税理士ではありません。
2つの特例のどちらに該当するか迷ったときは
買い換えをするかどうかがまだ決まっていない段階では、どちらの特例が使えるか判断しづらいこともあります。
- すでに新しいマイホームを購入済み、または購入する予定が固まっている場合は、買換えの特例の対象になるかを確認します
- 買い換えの予定がなく住宅ローンの残債がある場合は、特定居住用財産の譲渡損失の特例の対象になるかを確認します
- どちらの特例も所有期間5年超という共通の要件があるため、まずは売却する年の1月1日時点の所有期間を確認することが最初の一歩になります
売却損が出そうな見込みであっても、実際にいくらの損益通算・繰越控除が受けられるかは、譲渡所得の金額とオーバーローンの金額の両方を確認しないと分かりません。早めに取得費や住宅ローン残高の資料を揃えておくと、確定申告の準備がスムーズになります。
よくある質問
Q: 売却損が出た場合、必ず税金の還付を受けられますか。
A: 自動的に還付されるわけではありません。居住用財産の買換えの場合、または住宅ローンが残っているオーバーローンの場合など、要件を満たしたうえで確定申告をすることで損益通算・繰越控除の特例を受けられます。
要件に該当するかどうかは事前の確認が必要です。
Q: 損益通算と繰越控除の違いは何ですか。
A: 損益通算はその年の売却損を給与所得など他の所得と相殺する仕組みです。
控除しきれなかった売却損が残る場合、翌年以降最長3年間、繰り越して所得から控除できる制度が繰越控除です。
Q: 買い換えをしない場合でも特例は使えますか。
A: 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除という特例があり、買い換えをしなくても、売却時に住宅ローンの残債(オーバーローン)がある場合には適用できる可能性があります。
所有期間が5年を超えていることなど要件の確認が必要です。
Q: 所有期間はどう数えますか。
A: どちらの特例も、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていることが要件です。
取得日から実際に何年経っているかではなく、1月1日時点での判定になる点に注意してください。
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