認知症の親の家は売れるのか
「親が認知症と診断されたが、施設の入居費用のために実家を売りたい」という相談は、札幌でも増えています。しかし判断能力が不十分になった後は、本人が単独で売買契約を結ぶことは一般的にできず、そのままでは売却の手続きを進められないことがあります。
この記事では、認知症の親の家を売却したい場合にどのような手続きが必要になるのか、成年後見制度の仕組みと、判断能力があるうちにできる備えについて整理します。断定的な判断は避け、実際の手続きは専門家に確認しながら進めることをおすすめします。
判断能力が低下すると不動産売却はできなくなるのか
不動産の売買契約は、契約の内容を理解し、意思表示ができることが前提となる法律行為です。認知症などにより判断能力が不十分になった後は、一般的に本人単独で有効な売買契約を結ぶことができないとされています。
- 契約の有効性の問題:判断能力が不十分な状態で結んだ契約は、後から無効と判断される可能性があります。
- 家族による代理はできない:委任状があっても、判断能力が失われた後の本人の意思にもとづく代理権は、一般的に認められないと考えられています。
- 制度を利用する必要がある:本人に代わって法律行為を行うには、成年後見制度などの法的な仕組みを利用する必要があります。
「家族なのだから代わりに売れるはず」と思われがちですが、実際にはそう単純ではない点に注意が必要です。
成年後見制度を使って売却する方法
判断能力が低下した後に不動産を売却するには、成年後見制度を利用するのが一般的な方法です。
- 成年後見人の選任:家庭裁判所に申立てを行い、本人に代わって財産管理を行う成年後見人を選任してもらいます。
- 申立てから選任までの期間:一般的に申立てから成年後見人の選任まで、目安として1〜2か月程度かかるとされています。
- 後見人による売却手続き:選任された成年後見人が、本人に代わって不動産会社との媒介契約や売買契約を進めます。売却して利益が出た場合は、所有期間5年以下で39.63%、5年超で20.315%の譲渡所得税がかかる点も本人の財産として考慮されます。
成年後見制度を利用する場合、司法書士や弁護士が後見人に選任されることもあり、家族だけで自由に手続きを進められるわけではない点も理解しておく必要があります。
居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要
成年後見制度を利用して不動産を売却する場合でも、対象が本人の居住用不動産であるときは、追加の手続きが必要になります。
- 家庭裁判所の許可が必須:成年被後見人の居住用不動産を売却するには、あらかじめ家庭裁判所の許可を得る必要があります。
- 許可が下りない場合もある:本人にとって不利益な内容と判断されれば、許可が下りないこともあります。
- 非居住用との違い:入院や施設入居で長く住んでいない実家であっても、居住用不動産として扱われる場合があるため、事前に司法書士や弁護士に確認しておくと安心です。
この許可の手続きがあるため、成年後見制度を利用した売却は、通常の売却に比べて全体で半年〜1年程度長くかかることを見込んでおく必要があります。
判断能力があるうちにできる備え
認知症などで判断能力が低下する前であれば、将来に備えて次のような選択肢を検討することもできます。
- 家族信託:本人が元気なうちに、不動産の管理・処分を家族に託す契約を結んでおく方法です。判断能力が低下した後も、あらかじめ決めた条件で家族が売却などの手続きを進められる場合があります。契約書の作成には、目安として30万円〜100万円程度の費用がかかることが一般的です。
- 任意後見制度:本人が判断能力のあるうちに、将来の後見人となる人を自分で選んで契約しておく制度です。公正証書の作成費用として、目安として1万円〜3万円程度の実費がかかります。
- 早めの話し合い:実家を将来売却する可能性があるなら、判断能力が十分なうちに家族で方針を話し合っておくことが、結果的にスムーズな対応につながります。
家族信託や任意後見は、いずれも本人の判断能力があるうちに契約を結んでおく必要がある制度のため、認知症の診断が出てからでは選べない場合がある点に注意が必要です。
認知症の親の家を将来売る可能性がある場合の心構え
親がまだ元気なうちから実家の将来について話し合うのは気が引けるという声もありますが、早めの準備が本人と家族双方の負担を減らすことにつながります。
- 相場を知っておく:将来売却する可能性があるなら、無料AI査定ツールで早めに概算の相場を把握しておくと、家族信託などの制度を検討する際の判断材料になります。札幌市中央区であればおおむね20〜26万円/㎡、その他の区でも8〜13万円/㎡程度が目安になります。
- 専門家への早めの相談:司法書士や弁護士、家庭裁判所の窓口に、判断能力が十分なうちから相談しておくことをおすすめします。成年後見制度を利用する場合、専門職が後見人になると年間で24万円〜36万円程度の報酬が継続的に発生することもあります。
- 兄弟姉妹間での共有:相続人になる予定の家族間で、実家の将来について情報を共有しておくと、いざというときの手続きがスムーズになります。
これらの手続きは一般的な整理であり、個別の状況によって判断が分かれるため、最終的な判断は税理士・司法書士・弁護士など専門家に確認することをおすすめします。
札幌で親の家の売却を検討する際のポイント
札幌の実家について、認知症の親に代わって売却を検討する場合は、道内ならではの事情も考慮しておくとよいでしょう。
- 空き家期間の管理:施設入居後に実家が空き家になっている場合、雪で屋根や外壁が傷みやすいため、成年後見の手続きが進む間の管理方法も検討しておく必要があります。
- 道外の家族との調整:子どもが道外に住んでいて現地に来られない場合、成年後見人や司法書士とのやり取りをオンラインで進められるか確認しておくと安心です。
- エリアごとの相場の把握:エリア別の相場一覧で、市街地エリアと郊外の相場水準をあらかじめ把握しておくと、家庭裁判所への申立ての際の資料としても役立ちます。
認知症の親の家の売却は、通常の売却より時間と手続きがかかることを前提に、早めに動き出すことが大切です。相続登記の義務化により、相続を知った日から3年以内に登記が必要になった点も踏まえ、将来の相続もあわせて2024年のうちから家族で話し合っておく方も増えています。
よくある質問
Q: 認知症と診断された親の家は絶対に売れませんか
A: 本人単独での契約は一般的に難しくなりますが、成年後見制度を利用することで売却できる場合があります。
居住用不動産の場合は家庭裁判所の許可も必要になります。
Q: 家族が代わりにサインすれば売却できますか
A: 判断能力が不十分な状態では、家族による代理での契約は一般的に有効と認められないと考えられています。
成年後見制度など、法的な手続きを利用する必要があります。
Q: 成年後見人が決まるまでどのくらいかかりますか
A: 家庭裁判所への申立てから選任まで、目安として1〜2か月程度かかるとされています。
案件によってはさらに時間がかかる場合もあります。
Q: 元気なうちにできる備えはありますか
A: 判断能力があるうちに、家族信託や任意後見制度を利用しておく方法があります。
認知症の診断が出てからでは選べない制度もあるため、早めの検討をおすすめします。
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